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My academic interests are exegesis of the Qur'an and its historical development, and the mystical theories of Sufis(Mystics) in the early Islam, and re-examination of the concept "mysticism" in Religious Studies. 現在の学術的関心は、クルアーン解釈とその思想的展開、初期イスラームにおけるスーフィー(神秘家)たちの神秘的理論、さらに宗教学における「神秘主義」概念の再考です。

Monday, October 10, 2011

発表要旨掲載(日本宗教学会@関西学院大学)

久しぶりの更新となりました。
不精にも程がありますが、関西学院大学(2011年9月2-4日)で開催された日本宗教学会の発表要旨を掲載しておきます。本要旨は『宗教研究』の大会紀要号に掲載される予定です。
なお、本年度の宗教学会賞は伊達聖伸さん(上智大学准教授) が受賞されました。私としては予想通りでしたが。


タバリーのタフスィールにおけるクルアーン解釈理論 
  
澤井 真


 クルアーンは、これまで多くのムスリムたちによって注釈が付され、解釈されてきた。こうした聖典解釈は、一般的にタフスィール(tafsīr クルアーンの注釈書)と呼ばれており、これまで数多くのタフスィールが書物として編まれてきた。クルアーンの注釈や解釈においては、預言者ムハンマドのハディース、啓示の状況、さらに日常生活におけるコンテクストもクルアーン解釈の重要な構成要素を成している。
 クルアーン解釈において、クルアーンの意味を字義的、逐語的に説明しようとする試みであれ、個人的見解を通して神の言葉を理解しようとする試みであれ、それらの営為は常に一つの解釈となりうる。このことは、アラビア語で下されたクルアーンの「忠実な」翻訳書であっても、一つの解釈の産物とみなされることからも理解できる。本発表は、そうした前提に基づいて、初期のクルアーン解釈を代表するタバリー(d. 923)のタフスィールである『クルアーン章句解釈に関する解明集成』(以下、『解明集成』と略記)から、彼のクルアーン解釈のパースペクティヴを理解する。
 『解明集成』は、クルアーンの全章句に注釈が施された最初期のタフスィールである。こうした点において、彼のクルアーン解釈は「連続的注解のタフスィール」として分類されている。また、彼の注釈書には多くの伝承が引用されていることから、「伝承によるタフスィール」とみなされてきた。
 『解明集成』の序において、タバリーはこの書物が当代のクルアーン注釈よりも包括的であること、さらに彼が同意するとしないに関わらず、複数の解釈を紹介し最良の解釈を選択することを挙げている。その際、彼は一般的に「注釈」の意味で用いられている「タフスィール」の語と、「解釈」の意味で用いられている「ターウィール」(ta’wīl)の語を使い分けることなく使用している。そのため、タバリー自身が自らの著作を注釈書と捉えていたのか、解釈書として捉えていたのかは判然としない。ただし、彼は個人的見解に基づく解釈に否定的であり、彼が自らの主観性を出来る限り排除する形でクルアーンに注釈を付すことを試みていた。
 こうした視点に加えて、彼はクルアーン解釈の三つの側面を挙げることで、自らのクルアーンへのパースペクティヴを提示している。まず、第一の側面は神のみが知る解釈である。クルアーンの中で繰り返し語られる終末の日を知るのは神のみであり、ムハンマドでさえもその兆候を窺い知ることができるだけである。第二の側面はムハンマドによってウンマに与えられる説明である。タバリーによれば、クルアーンの中には彼の説明がなければ理解することができない側面があるという。第三の側面は、クルアーンが啓示された言語、すなわちアラビア語を知る者が行なうことのできる解釈である。このことは、単に言語的アプローチを意味するばかりではなく、様々な修辞法を通して神の意志を理解することができることを意味している。
 これらの点を踏まえながら、タバリーは最良のクルアーン解釈へ到る方法として、解釈や注釈に関する明快な証拠の必要性を論じている。その証拠として彼に重要視されたのが「伝承」であった。タバリーのコンテクストにおいて、この伝承の語の範疇は、預言者ムハンマドのハディースと彼の教友や後継者たちのアサル(athar)が含まれる。このアサルはムハンマドによる伝承ではないが、前代までのクルアーン解釈として重要な情報を提示していた。このように、タバリーは伝承や言語によるアプローチを駆使しながらクルアーンを解釈しようとしたのである。

ハーバード大学滞在報告/Report of Staying at Harvard University (Aug 2016 - Jan 2017)

年度末となりました。久しぶりの更新となりましたが、昨年8月末から1月初旬までアメリカへ再び渡航し、今年の2月はトルコに滞在しておりました。何だか少し遠い昔のことのように感じますが、滞在報告を記しておきます。 私が滞在していたのは、ハーバード大学神学大学院に併設されている世界...